昨日、川崎のヨドバシカメラに行ったら、テレビの売り場でアクトビラのデモをやっていた。
エスカレータを降りてすぐの正面に、50インチくらいの大画面液晶テレビを2台並べて、左側にアクトビラのトップメニュー、右側にコンテンツとしてアヴリル・ラヴィーンのライブを流していた。ライブ映像の右肩に、アクトビラのロゴが常時表示されていて、そのロゴで私はそれがアクトビラのプロモーションだと気づいたわけですが。
家電量販店のテレビの売り場でアクトビラのプロモーションやってるのは初めて見た。「テレビでいろいろ情報取れまっせ」という説明パネルと、アクトビラの画面を流すテレビ2台とアクトビラのパンフ。それだけだったけど。説明員はいなかったけど。そこに立ち止っている人も私以外にはいなかったけれども。でも初めて見た。
アクトビラとは、テレビにネットをつないで、テレビに搭載した専用ブラウザでテレビに特化したサイトを表示する仕組み。ニュースや天気予報、交通情報、株価、番組情報、エンタメ情報等を提供する。アヴリル・ラヴィーンのライブとかも。オンデマンドの有料動画もある。
うーん。微妙。アヴリルって確かに人気はあるかもしれないけど、ティーンエージャーに人気でしょ?アクトビラのターゲットってそこなのかなぁ。
アクトビラ。
パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、日立のテレビメーカ5社が2006年7月に設立した会社である。
テレビのアナログ地上波放送停止にともなうテレビの買い替え需要にあわせて、アクトビラ対応のテレビを1,000万台普及を目指すとかぶちあげてた。(確か。記憶が少しあいまいだが。)先週の日経新聞では、現在の端末普及は約80万台だそうだ。
メーカが共同でネット接続仕様の標準化を確立したのは大きなことだと思う。といってもインターネットの標準は既にとっくにあった訳で。
ただ、アクトビラは確かにテレビでネット接続するんだが、クローズドなネットなんだな。インターネットじゃないんですよ。アクトビラのサーバーにあるコンテンツだけしかみることができない。ケータイで言うと、公式サイトだけで、勝手サイトが一切見られないサービスみたいなもんなんだよね。全てのコンテンツを自社で提供しようとしているんだな。
パソコンでインターネットを見ることとの違いというか、テレビならではの差別化戦略なのかもしれませんが。
ううむ。ネットといえばインターネットだと思うじゃないですか。違うの。閉じてるの。ま、アクトビラは、テレビという端末のデフォルトのポータルサイトであり、そこからポータルとしての接続で儲けようとしているから、オープンではなく、囲い込みの方向にいっちゃうのかも。
で、アクトビラについてはかねてより注目していたわけです。テレビとパソコン(或いはホームサーバー)による、家庭のリビングをめぐる国とり合戦のいちプレイヤーとして。家庭の中で、テレビの置かれている位置というのはリビングであり、一番中心的な場所を占めていると思われ。
対してパソコンの方は、その名のとおり、パーソナルなユースなので、家族みんなで使うというよりもひとりで使うもの。そのパソコンの利用用途を拡大して、家電とネットワーク接続しちゃって、家族みんなで使う用途を創り出してホームサーバーとしての市場を生み出そうという考え方がある。
そうした流れの中で、まずはパソコンのテレビ化はすでに結構進んでいる(ように思う)。パソコンは、テレビチューナーを標準で装備してるし、液晶20インチ超の大画面ディスプレイもパソコン売り場では当たり前になってるし、パソコンはその機能の一部として、どんどんテレビを取り込み始めている。家電量販店のパソコン売り場に並んでいるパソコンの画面の多くには、テレビの映像が映し出され、テレビも見れるパソコンとして、そこをセールスポイントにしていることがうかがわれる。
マイクロソフトは、テレビライクなコンテンツを提供する手段として、メディアセンターというネットの(確かクローズドな)サイトをつくってコンテンツ配信を始めている。これもテレビの位置を狙ってのこと。Webの中だけではない、こちら側の世界におけるアテンション獲得競争だ。テレビとパソコンの。
Yahoo! は、Yahoo! anywhere というサービスで、家庭内の映像、写真、音楽、様々なコンテンツをホームサーバーで統合管理することを提案してる。(最近はあんまり話題きかないけど。)
アップルは、Apple TV という装置でパソコンのコンテンツをテレビに表示させるしくみを提供している。
みんな、テレビをメインのディスプレイにして、テレビ、HDDレコーダ、オーディオ、ビデオカメラ等の家電をネットワーク化して、パソコンつないで、ホームサーバーで管理することを狙っている。主導権争い。リビングをめぐる戦争だ。
ホームサーバーについては、まだどこも成功していない。ユーザ側がまだそこまで追い付いていない感じだし。それで何ができんの?ってとこが、明確にできていないように思う。
この競争のややこしいところは、新しい市場を創り出そうとして参加しているプレーヤーが、ハード、ソフト(というか、OS)、ネット側のプラットフォームと、いろんな立場から参入していること。そしてそれらのプレーヤーの足並みをそろえるためのビジョンが存在しないこと。技術が先行してるんだろうな。個々の技術開発の方向性としての小さなビジョンは各社あるのかもしれないけれど、家庭内での生活の在り方を、こんな風に変えたいというビジョンがない。端末とネットとプラットフォームと。それらをひとつの方向にまとめていく方向性が。
アクトビラに関しては、これに加えて、テレビとネットのアテンション獲得競争も絡んできて、テレビ局とテレビの端末メーカとの立場の違いとかもあって、更にはコンテンツ配信に関する著作権管理の問題なんかもあって、相当ややこしい問題がたくさんからまってる感じ。テレビとネットの両方に足をかけてるようなサービスだしねえ。
リビング戦争は、実はまだ開戦前夜の段階なのです。
でもみなさん、準備はいろいろしてますね。
追記
ところで、ホームサーバーって映画で例えるとどんなイメージなんだろ?未来の家庭って、どんななんだろ?未来のサービスのイメージって、SF映画の中で描かれてるシーンがヒントになってたりすること多いでしょ?
「ブレードランナー」の中で、写真を拡大したり分析してるコンピュータ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」に出てくる壁面大テレビ。(でもあれは確かに大きいけどただのテレビだったような・・・) むしろ「2001年 宇宙の旅」に出てくるコンピュータHALが、家庭にあるって感じが近いのかも。
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