パナソニック、シャープ、ソニーなど日本の大手家電メーカーは、巨額の赤字が続き、社長やCEOが退任する事態に陥っています。また、テレビのシェアがトップの韓国のサムスン電子ですらテレビ部門は赤字というビジネスとして成り立たないくらいの価格破壊が起こっています。
via coffeebreak.bloggers-network283.com
hokkyさんから「日本の家電メーカーは今後どうすると良いのでしょうか?」というお題が出されました。
家電というカテゴリーの商品がコモディティー化し、価格競争にさらされ、韓国や中国、新興国等の人件費の安い国のメーカーとのコスト競争で利益が出せなくなってきている状況への対策は何だろう?
新聞か何かで見ましたが、中国の人件費は上昇傾向にあるそうです。確か、この5年間で倍になったと記憶しています。人件費の差は小さくなっている。(中国が何倍になったかよりも、絶対額、現時点で日本と中国の人件費にどの程度の差があるか、が重要ですが。)中国の人件費が上がるということは給料があがるということであの国の購買力が大きくなることを意味します。それが倍になるとしたらすごいインパクトがあります。
安い人件費を強みに製造業が発展し、経済が成長して所得が増え、購買力が上昇するというプロセスは他でもないこの日本が過去に経験してきた道です。中国がそのプロセスを辿ろうとしており、他の新興国も同様であると考えます。世界のマーケットが大きくなる。人々が豊かになってゆく。トレンドとしてはよいことではないかと思います。もちろんそのプロセスには景気過熱にともなうインフレや国内所得格差など、様々な問題が予想されます。経済の相互依存が以前よりも強くなっている現在にあっては、資源の輸入価格や製品輸出や為替変動などの様々な点で海外の景気動向による影響も大きくなっています。国の安定のためには実に様々な課題を克服していく必要がある。ま、そのこと自体は今に始まった話しではなくこれまでも同じだったはずですが。
人件費の相対的に安い国は、ミャンマーをはじめアジアにもまだまだありますし、南米やアフリカの国々もいずれはこうしたワールドワイドな経済に組み込まれていくことでしょう。現在でもアメリカ企業が中国での製造を行っているのだから地理的距離はそんなに問題にはならない。
さて、日本の家電メーカーはこのような状況の中でどうすればよいか?コモディティ化を避けて、商品の差異化を図る以外にないと思います。理想はアップルがやったようなイノベーションです。
それはどんなものでしょう?
私は自分で料理をしません。そのノウハウも経験も全くと言っていいくらい何もない。そんな私のような人をサポートしてくれる家電があったらいいんじゃないかな。初心者は、COOKPADのレシピでも検索して見よう見真似でやってみるところから始めるんでしょうけど。ほんとの初心者が知識とか常識ないところから始められるようなサイトをつくって、それと家電が連動するとか。
そう、家電の今後は、今よりももっともっと賢くなっていく方向に向かうのだろうと思っています。ひとつは節電の方向に向かって。いろんな家電の電力使用状況は家庭の中のコンピュータに集められて、全体で調整していくような方向はやはり長期的には実現していくのではないでしょうか。スマートメーターとかスマートハウスと呼ばれているコンセプトですね。
そして家電にはいろんなセンサーが組み込まれていって、外部の環境を自律的に判断してその機能や動作を自動制御する方向が更に進むのではないかな。そして家電のそうした作動状況のデータはサーバに吸い上げられて、地域ごとの利用の特性や季節や時間帯別の利用状況が分析されて、そのフィードバックが利用者に返される。もっと効率的に、或いは経済的に利用するためのノウハウ或いはアドバイスとして。
例えばテレビであれば今現在どんな番組が一番見られているかといった情報により番組視聴のおすすめを表示するとか。レシピであればどんなメニューが一番検索され、見られているか。洗濯機はみんな何時までならセーフなのかとか。冷蔵庫にもバーコードリーダかできれば画像認識カメラをつけて、食材の在庫管理をして欲しいな。
家電はもっと賢くなっていくでしょう。できることなら自動で動いてあれこれして欲しい。差異化の方向としてはこんな感じではないでしょうか。
テレビがどんどん賢くなるということは、結局人間を退化させることではないのかというテーマで書いたことがあります。それは、
タブレットがテレビになる時http://mugendai.bloggers-network283.com/2012/02/%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%8C%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E6%99%82.html
というものでしたが、かつて娯楽は映画でした。映画は映画館に行かなければ見ることはできない。テレビが登場して、自宅で娯楽を楽しむことができる。どんどん身近になり、便利になることで人間の行動範囲を狭めてしまい、最終的にその娯楽を手のひらで済ませてしまうことになる。しかし、本来タブレットは人間の行動を制限することではなく、自由に広げることにあったはずです。それがタブレットがテレビになることで、人間を退化させることなる面があるのです。もう一度、人間を退化させることでなく、テレビの情報を積極的に活用させることについて考えていく必要があるのではないかと思ったのです。
投稿情報: Account Deleted | 2012/03/18 18:00
リンクを読みました。
ITリテラシーが断絶をつくる。或いは格差を。その認識においては同感です。
その差を埋める取り組みが必要である。
それは私も同意します。しかしそのために今、猛烈なスピードで進行している変化にブレーキをかけるべきではない。
一番遅い人間に速度を合わせるべきではない。そう考えます。それがたとえ遅い人間を置いてけぼりにすることにつながるとしても。機会は公平であるべきである。だが、それは最後尾にあわせることではない。
テレビしか使えない人間はテレビを使っていればいい。便利なテレビが欲しくてタブレットを買った人間に、ネットやアプリやソーシャルなコミュニケーションなどの新しい可能性への体験の機会を提供することが重要だと思うのです。
その提案や呼びかけにのってこない人間を救済する必要を私は感じない。
それは選択です。
あくまでも自分のことだけに閉じていることを望む人間に、外の世界を理解させることはできない。それは本人の選択です。
外の世界とつながることがこんなに簡単になったのに、それを拒むということはそういう選択をしたのだというしかない。
家畜でいたいと望む人のことは方っておけよというのが私のスタンスかもしれません。そうじゃないあり方へのチャンスは平等にあるべきだと思います。
家畜でありたいと強く望む人の説得を私はしたいと思わない。
ちょっと極論かもしれません。というか、家畜という言葉自体がアウトかもしれませんね。
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2012/03/18 18:59
技術開発という点において、それをちゃんと企業内で評価しない制度に問題がある。
ちきりんのブログで本テーマに少し関連するような投稿がありました。
「エンジニア人生のリアル」Chikirinの日記 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20120324
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2012/03/24 10:06