先週の週刊経済誌東洋経済が「テレビ・新聞陥落」という特集を掲載していた。
世界的な経済不況のあおりを受けて、テレビや新聞の広告収入が落ちているという。
電通の調べによると日本のテレビの広告売上はトータルで約2兆円。過去10年くらいの推移では多少の浮き沈みはあるものの、それほど大きな変動はしていない。上下幅は数パーセントというところだろう。
他の業界、例えば百貨店などが10年前と比べると数十パーセント売上が落ちていることを考えると微々たるものだ。不況になると広告費が削られる、という我々の感覚からすると意外なほど、テレビはその影響を受けていない。安定していたのだ。従来の広告が減った時には、例えば消費者金融やパチンコ等、新しい広告主がそれまでとは違う産業から現れてその穴を埋めてきたのだろう。
その状況が変わった。らしい。今回は急激に悪化しているようだ。これまでの安定していた中でのでこぼこではない。その落ち幅は急降下だ。しかし、目を転じて他の産業に眼をやると、数十パーセントの減収に見舞われているところは多数ある。自動車メーカーや電機メーカーの激しい業績悪化は、近頃よくニュースで目にするではないか。それこそテレビニュースとかで。
現在の経済状況を考えると売上の急減はそんなに特別なことではなく、多くの企業が直面していることだ。しかし、テレビ業界については、今回の景気後退は変化の引き金を引いたに過ぎないのかもしれない。根本的な原因は他にあるのかも。
構造変化は始まっている。テレビ業界は恐らく今年を契機に大きな変化を迎えることだろう。いびつな産業構造は、きしみをあげている今の世界不況の波にもまれて、現状のままでは耐えられまい。業界のルールが大きく変わるだろうと予想する。
キー局と地方局との関係や、放送局と制作会社との関係などいびつな部分が変化にさらされることになるのだろう。視聴率という数字だけに支えられ、その効果が明確でないままにつぎ込まれてきた2兆円の市場が変化にさらされる。
その変化には行政も無関係ではいられない。限られた電波を誰に、どのように使わせるのか?国としての戦略が問われる。例えばBSとCSの違いが何なのか、私にはさっぱりわからない。わからなくてもいいのかもしれないが。クールジャパンなどと持ち上げられる日本のコンテンツ産業をどのようにビジネスとして育てていくのか。コンテンツの大きな部分をこの国ではテレビ局が押さえているように私には見えるのだが。縦割行政の弊害が大きな無駄を生んでいるのではないのだろうか。
テレビ業界と言うところは、時代の動向に敏感なところだというイメージがあるが、果たしてそれは本当なのだろうか。インターネットという情報伝達基盤の持つ意味を未だ、過小評価しているように見えてならない。
テレビの抱えるコンテンツをネットの海にとき放して、そこから収入を生み出すしくみを考え出さねばなるまい。
映画館で見るにしろ、DVDを買うにしろ、レンタルショップで借りるにしろ、映画に対して我々はおカネを払って見ている。
あなたはおカネを払ってテレビの番組をみるだろうか?
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