ネットワーク・サービスの役割はどこまで拡大することができるだろう?
これまでは、コミュニケーションの進化の方向性がどっちを向いてるんだろう?ということをこのブログでは考えてきた。しかし、ネットが果たすべき役割とは、コミュニケーションの進化という以上に、経済の効率化、各産業の生産性向上への貢献といった部分まで踏み込んでいくべきであると、今、感じている。
ケータイの普及によって、通信キャリアは業績を拡大してきたし、消費者はケータイに大きな額を支払うことが当たり前となってきた。だが、これは消費者の可処分所得の中でのシェアの変動に過ぎない。可処分所得のパイが増えたわけではなく、ケータイ支出が増えた分だけ、他の支出が減少したというゼロ・サム・ゲームの枠の中の変化だ。
ネットワークという多額の設備投資を伴うサービス産業としての役割。と、いうよりむしろ、情報という人間の本質にかかわるサービスとしてのネットの役割としては、人の本質にかかわるだけに、そこにかかる産業としての期待は大きいのだと私は解釈する。
つまり、今後のネットの目指すのは経済成長に対してどれだけ貢献できるのか?という視点。経済効果に対する注視。自社の利益にとどまらず、日本という経済圏の生産性、経済効率を押し上げるためのサービスのあり方。
それは、ネットワークの役割ではないと思われるだろうか?
だが、人々の生活を変える、ライフスタイルを変えるケータイというものを目指しているのであれば、それは同時にワークスタイルに対する変革もありうるべきスコープであるはずである。
それでは経済の生産性、経済効率の向上に対してネットはどのように貢献するのか?
それは無駄を省く。無駄を削減するということだ。無駄な在庫を削減する。無駄な待ち時間を削減して設備の稼働率を向上させるということ。無駄なものを作らない。売れない製品を大量に作ることを止めるということ。
無駄とは何か。それは需要と供給のミスマッチだ。そのミスマッチには時間の側面と量の側面がある。
ひとつは製品の製造と流通に必要な時間、供給のタイムラグに起因するミスマッチ。ハンバーガーショップでも注文を受けてから製品を作って供給すれば無駄がない。だがこれでは注文を受けてから提供するまでの時間、客を待たせることになる。供給のタイムラグだ。これを最小化するために作り置きをするという方法がある。
あらかじめ需要を見込んで先に作っておくことによって、注文に最短で応えることができる。これが見込み生産というものだ。車でもパソコンでも家電でもほとんどの製品は製造から流通の時間が長いために、注文にすぐ応じられるように見込み生産を行っている。受注生産では客を待たせる時間が長すぎるからだ。
そのために小売りの店頭に在庫があり、流通過程の問屋に在庫があり、さらにメーカ在庫がある。
だが見込み生産には量のミスマッチが生じる。ハンバーガーの例でいえば、作りすぎによる売れ残りが生じるということだ。売れ残った製品は破棄され、無駄となる。車やパソコンは売れ残ってもすぐに商品価値がなくなる(腐る)訳ではないため、すぐに破棄されることはないが、不良在庫という名の無駄となり、いずれは安値でたたき売られる運命だ。見込み生産には量のミスマッチによる無駄がつきものなのだ。
製造設備の稼働効率の面からも、同じ製品を一度に大量に作る方が効率がよく製造コストが安いということもある。ひとつひとつ受注生産していたのでは製造コストが激増してしまう。
見込み生産がやめられないのであれば、その量のミスマッチを最小化することが無駄を削減する手段だ。当たり前の話だが。見込み生産における需要予測の精度を向上することが無駄を削ることになる。需要予測の精度向上にネットが貢献できないだろうか。
そしてもうひとつ、需要量の変動に製造プロセスを柔軟に対応させる方法。
見込みより少なめに製造して、需要がそれよりも大きければ即座に反応して製造量を拡大する。
量の変更をすばやく柔軟に対応可能にすること。
情報によるコントロールによってその柔軟性を実現できるのではないか。
需要の変動に応じて製造体制をすばやく変化、対応させること。
様々な情報をネットワーク上で統合することによりそのスピードを上げることができるのではないかと思うのだ。
変化に対応するスピードを速くするためにネットワークを活かせるかどうか。それが問題だ。
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