私にとっては、このブロガーズネットワーク翼というサイトは、IT関連の常連さんの集まるなじみのバーといった感じでしょうか。常連さんが多いのでちょっとしたきっかけで会話があったり、時にはつっこんだ議論が始まったりするといったような。他のブログではなかなか会話に発展することが少なかったりするのでね。翼の常連さんは似たような関心領域を持った人が多いので会話しやすいというか。
読者の立場から翼を考えると、それはニュースを見るサイトではない。最新のニュースが集まったサイトではないし、網羅性があるわけでもない。翼のおもしろさはいろんな切り口から語られる意見のその視点のユニークさにあると思う。コメントや引用、リブログによってそんな切り口が広がり、深まれば更に楽しくなりますね。そう思います。
そういう意味では意見が絡み合うインタラクティブな場として盛り上がっていけばいいな。
夢幻∞大さんは、一次情報の提供、すなわち報道のみがジャーナリズムではなくて、一次情報に関する「論考・分析」、或いは「評論」、「論評」もまたジャーナリズムだとする立場をとっている。
ブログジャーナリズムは誕生するか2 ~夢幻∞大のドリーミングメディア
先に述べたとおり、自分はジャーナリストになりたいとは思っていないが、一次情報(取材)の提供だけでなく、それに対する論考・分析、評論、論評にも価値はあるとする点では賛成です。実際問題として、現在書かれているブログの多くはニュースの引用・紹介だったり、それについての感想だったりするのが実情だと思うし。それ以外の、今日友達とカラオケ行ったとか、ランチにこんなもの食べてうまかったとかいうブログなんかは確かに一次情報かもしれないけれど、私にとってはあまり読む価値がない。
夢幻∞大さんの言われるように、事実を伝える報道と、それに関する解説、論評のふたつの側面がメディアにはあると思いますが、今後は解説、論評の方にメディアの価値の重点が移行していくだろうというのが私の考えです。なぜなら、ネット以前の時代には情報提供手段がテレビ、ラジオといった放送か、新聞、雑誌という物理的媒体による流通以外に方法がなかった。マスメディアには、情報提供そのものに価値があった。他に代替手段がなかったがゆえの希少性であったといえる。
それが今や、ネット上には情報があふれている。情報へのアクセスには膨大な選択肢がある。スマホのアプリなんかも含めて、情報提供手段が膨大に多様化した現在にあっては、メディアの価値は単に事実を伝えるだけでは他の情報提供手段と差別化できない。事実の伝達に付加価値をつけなければ差別化できない。情報の編集・加工が必要不可欠である。ナマの情報をそのまま出すのではなく、複数の情報を関連付けて解説したり、過去の経緯や背景を含めて意味づけを行ったり、今後の見通しを加えたりといった、付加価値がメディアにとって重要になるだろうというのが私の考えだ。
ただし、そのこと自体にはプロもアマもない。情報提供手段は、アマチュアにもあるからだ。シロートでも情報発信可能な時代だからだ。そこにあるのはクオリティの差だけだ。それは情報流通のためのコストが圧倒的に安くなったから生まれたフラットな世界。プロもアマも同じ土俵で勝負するアテンション獲得競争の世界です。
そこで必要なのはどんな情報をピックアップするのかというフィルターのユニークさと、ピックアップした情報をどのように加工し、どんな視点から解説するのかという味付けのユニークさ。ユニークであることが大切であるということは、つまりは受け売りではなくて自分の頭で考えているかどうか。空気読んでまわりにあわせるという態度から、どれだけ離れて反対側でいられるかということだと思う。そういう意味ではこのブロガーズネットワーク翼のブロガーは皆、見事に空気読まない人たちであるので、そこから翼の独自性をみつけていけたらいいなと個人的には思います。
情報についての味付けという点では、夢幻∞大さんの書いているキュレーターという考え方が私にはしっくりきます。言葉としてはなじみが薄い言葉ですけどね。
1億総キュレーター時代にはセレンディピティが重要になる ~夢幻∞大のドリーミングメディア
情報があふれている時代だからこそ、それを目利きして、大切なことだけをピックアップして、その意味するところを背景など関連情報も含めて解説することには価値があるのだと考えます。
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AllAboutが現在どれだけ凋落しているかわからないのですが、
キュレーション・ジャーナリズムとは何か | 佐々木俊尚公式サイト http://pressa.jugem.jp/?eid=181
キュレーション・ジャーナリズムの台頭?ということですかね。
投稿情報: Account Deleted | 2011/08/21 15:21
情報を探す方法として、佐々木俊尚氏のこんな発言も。
『僕はこの食べログについて書こうと思って,前に会社に取材に行ったことがあって「食べログの有効活用ってどうすればいいですか.点数だけだと分からないですよね」って聞いてみたら,
「いや佐々木さん,それは簡単ですよ.食べログにはものすごいたくさんのカリスマレビューヤーがいます.1人で何十軒,何百軒も食べ歩いていて,詳細レビューを書いたりする方たちです.そういう人達の中で自分と同じ好みの人を見つければいい.その人がお勧めしていたら絶対失敗がないですよ」と言われました.』
ソースはここの46ページ
http://sgulrep.sgu.ac.jp/dspace/bitstream/10742/1410/1/SJ-20-2-033.pdf
現時点において、情報検索にはアルゴリズムとソーシャル検索の両方にそれぞれの利点・難点があるのでしょうね。使い分けるリテラシーは必要。
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2011/08/21 16:12
空気を読まないkobabです。
すごく納得しました。
翼はこれでいいんだな、と。
投稿情報: Account Deleted | 2011/08/24 11:22
あははは。空気読まない主義でいきましょう!
まずは自分たちが楽しみ、おもしろがることが大事じゃないかと思います。
幸いなことに、とてもおもしろいエキサイティングな時代にわれわれは生きているのだから。
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2011/08/26 01:45