今年の2月20日に、「[お題]Facebookは流行すると思いますか?その1」というタイトルでブログを書きました。その中で、Facebookはネットのヘビーユーザには受けても、そうではない一般のユーザにはあまり広がらず、日本国内ではそれほど普及しないのではないかという私見を述べています。
また、同じ記事の中で、2月20日時点での国内のFacebookユーザ数は、2,436,540人と紹介しています。ユーザ数では世界で46番目。直近の一ヶ月で58万人増えている。約24%増である。そう書いています。
情報のソースは、Facebook Statistics by country social bakers.com
さて、同じソースで5月15日現在の状況を見てみるとこうなる。日本は42番目につけている。
5月15日現在の日本のFacebookユーザ数は、3,118,880人。世界では42番目。直近一ヶ月での増減は、32,240人の減少です。減少率は、1.02%。トレンドは減少に転じている。
前回の記事の2月20日からの約3ヶ月の間でみると、682,340人増えているのだけれど。これは約28%の増。
ループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏のブログによると、3月11日の東北地方太平洋沖地震により、Twitterをはじめ、Facebook、mixi のソーシャルメディアの利用が劇的に増加したという。
mixi, Twitter, Facebook 2011年3月最新ニールセン調査 〜 震災の影響でソーシャルメディア利用者が急増。Facebookは760万人超え ~斉藤徹 In the looop
斉藤氏のブログによると、ネットレイティングス社のインターネット利用動向調査結果で、これらサービスの3月の利用者数は、mixi は1321万人(前月比124%)、Twitter は1757万人(同137%)、Facebookは766万人(前月比127%)に上るという。対前月で各社、3割前後増えたわけだ。
ただし、このネットレイティングスのデータは外部調査によるサイト訪問者の数であり、social bakers.comの公表するFacebook登録者数とは異なる。大体、mixi の登録ユーザ数だっておおよそ2300万人くらいなんだから。
と、いうことはmixi の登録会員の約半数は月に1回もアクセスのない休眠ユーザということか。と一瞬思ったが、いやいやネットレイティングス社の数字にはケータイからのアクセスは含まれていないんだった。だとすると、PCとケータイの利用が半々だとすると休眠ユーザは1割程度ということになる。(1321万人÷1.24=1065万人が前月のPCからのmixi 利用者数。ケータイからのアクセスが同程度あると仮定すれば月間2130万人のアクセスがあることになる。)もっとも、PCとケータイの両方からアクセスする人もいるので、その分、ユニークユーザ数は減るので、休眠数はもう少し多いはずだ。
Facebookユーザが直近一ヶ月で減少に転じた理由は、この震災直後の急増の反動であろうと考えられる。とはいえ、減少は減少である。新たに参加する人数よりも退会する人の方が多かったということだ。退会の手続きをせずに黙って休眠にはいったユーザはもっと多いはずだ。
この数字をどう解釈するか。
3ヶ月間で68万人、28%の登録数増加は確かに大きい。social bakers.comのサイトで更に過去6ヶ月間の変化をみてみると、142万人の増加で増加率は84%に上る。急成長していると言えるだろう。しかし全体でもまだ3百万人なのだ。この間、Facebook創設者マーク・ザッカーバーグについての本「フェイスブック 若き天才の野望」が話題になり、映画が公開され、国内メディアでもかなり取り上げられ、Facebookが中東でのジャスミン革命の引き金になったとテレビでも話題になり、その知名度はかなりあがったはずだ。相当な追い風となった。
これ以降、この追い風の影響は収束に向かうものと思われる。今以上に拡大を加速する要因は現在のところ見当たらない。爆発的な成長はないだろう。だとすると、おそらくは年内に5~6百万人程度になってそのあたりで停滞するのではないだろうか。
ブログやmixi 、Twitter等のネットサービスを利用して情報発信するヘビーユーザの数は、2月20日の記事にも書いたが国内ではおおよそ1000万人程度ではないかと私は考えている。その1000万人を様々なサービスが奪い合っている。上に述べたように、mixi を月に1回以上利用する人が2000万人程度いるのが本当ならば、もう少しライトなユーザも含めて3000万人程度がターゲットということになろうか。それがパイのサイズということになる。登録無料でスイッチングコストの安い(つまりは浮気性?なユーザをターゲットとする)ネットのサービスにとっては大きな市場とは言い難い。なにしろケータイの契約数は1億あるのだから。
利用者が増えるに連れて加速度的に利便性が急上昇するネットワーク外部性を特徴とするSNSとしてはやはり登録会員数1000万人程度がひとつの区切り(マイルストーン)になるのではないだろうか。
だがしかし、デジタルネイティブの層が大きくなってくれば、話は違ってくる。彼らはおそらくその大半が、私の考えるヘビーユーザに該当するだろうと思われるからだ。今の20代から下の層。おそらくは後5年もすると、ネットにおけるビジネス環境は現在とは全く違った様相となっているのではないか。
ネットどっぷりが当り前な世界。
いや、近頃のスマートフォンの急速な普及を考えると、その転換点の到来はもっと早いかもしれない。2年先か?そう。誰もがネットに常時つながっていて当り前の世界は、今とは違う世界であるだろうと思うのだ。
そんな世界を前提とするのであれば、Facebookがメジャーなサービスのひとつであっても違和感はない。今とは違う世界を前提とするならばだ。そしてそれを狙うのならば、Facebookはもっともっと若い世代に向けてプロモーションをかけなければいけないはずだ。
感覚でしかないが、どうも、今のFacebookユーザはおじさんとおばさんが多いような気がするのだがどうなんだろう?
時代を早く変えるためにも、どうか、デジタルネイティブたちに力を与えてやってくれ!
■関連記事
蛇足ながら、本文中で言及した斉藤徹氏のブログで人間関係の強弱としてのソーシャルグラフと、趣味・関心等のインタレストグラフの軸で、ネットのソーシャル系サービスを分析した記事がとてもおもしろかったのでリンクを貼っておこう。
ソーシャルグラフの進化と新興サービスがとるべき戦略 ~斉藤徹 In the looop
「ループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏のブログによると、3月11日の東北地方太平洋沖地震により、Twitterをはじめ、Facebook、mixi のソーシャルメディアの利用が劇的に増加したという。」
本文中でこのように書いたが、それを裏付けるようなニュースがあった。2011年8月22日の日経新聞に、東日本大震災の直後に、被災した自治体が情報発信に利用したTwitter公式アカウントのフォロワー数が地震前の10倍に増えたという。
地震以前からアカウントを持っていた11の自治体を対象に総務省が調査した。
なるほど10倍というのは大きな数字だ。人々が情報収集手段としてTwitterを利用したことを裏付けるものだ。
またラジオ福島のTwitterアカウントは3月末に3月10日と比べて約50倍にフォロワーを増やし、茨城新聞も約7倍と、地元のメディアも読者を大きく増やしていた。
デジタルガレージ、「ツイッター登録、震災前の10倍」で反発http://kabutanken.jp/news/?b=n201108220012&nm=m
被災自治体、ツイッター登録震災前の10倍にhttp://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E3EBE2E1998DE0E3E2EAE0E2E3E39797EAE2E2E2;at=DGXZZO0195570008122009000000
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2011/08/23 06:15