さて、その2です。Facebookについて、Webでの評判や、数字を拾ってみます。
日経ビジネスON LINEには、フェイスブックって古くない? という記事がでていました。いやいや、日本ではまだ新しいですから。地域による格差、情報伝達時差が縮小したこんな時代にあっても日米の差を感じさせる記事であります。
さて。
前回の投稿でも書いたように、現在の日本のFacebookユーザ数(アカウント数?)は、255万人で人口普及率では約2%。登録ユーザ数2,265万人のmixi(mixi 2010年度第3四半期(2010年10月~12月)決算説明資料4ページより)と比べるとまだまだ比較にならないという感じですが、じゃあ他国はどうなのか。前回、紹介したsocial bankersによると全世界のユーザ数は、6億42百万人(2011年2月26日現在)。
オルタナティブ ブログ"In the looop"の斉藤徹氏によると、世界の100以上の国でFacebookはキャズムを越えているそうです。キャズム、すなわちハイテク製品普及の第一関門。それを超えると一般に普及すると言われる壁。その境界線は16%。ジェフリー・ムーアの仮説です。
なぜ、Facebookだけが、キャズムを楽々と超えるのだろうか? ~In the looop 斉藤徹
斉藤氏は、Facebookの普及の理由を、その実名制による人物探索とメッセージ機能によるものと推測する。実名により、知り合いを探すことが可能になる。そしてメッセージが相手別に表示されるために、メールよりも見やすいのだと言う。
また、台湾、インド、オランダ、ブラジル、ベトナム、韓国、ロシアなど、普及が進んでいなかった国でもユーザが急拡大しているとも。
Facebookがついに6億人にリーチ、未制覇国も軒並み急増へ ~In the looop 斉藤徹
ふむふむ。世界でFacebookユーザが増えているのは確かだ。それは斉藤氏の言うように実名制のせいなのだろうか。上の未制覇国も急増の記事によると、ローカルSNSが先行していた国であってもFacebookは大きな勢いで拡大している。先行するSNSの存在は大きな障壁にはならないというのだ。
う~む。日本ではFacebookはあまり広がらないだろうという私の説は、根拠が危うくなってきだぞ。斉藤氏のブログをみると、ワールドワイドでのFacebook利用者は、ネットのヘビーユーザに限らない。
どうやらポイントはここら辺にありそうだ。ヘビーユーザ以外に広がるかどうか。
斉藤氏によると日本のTwitterユーザも1,000万人前後と言う(週刊ダイヤモンド2011年1月29日号P.38によると1,178万人)。ここら辺も、私の実感と差があるところではある。実感的にはTwitterって、まだまだマイナーなサービスという感じなのだが。自分のリアルな知り合いでTwitterユーザはほとんどいないし。斉藤氏もTwitterはキャズムを超えてはいないとしていて、マイナーと位置づけてはいるのだが。しかし、Google TrendsによるとTwitterのアクセス数は昨年から急拡大し、mixiにかなり肉薄している。
ここら辺はかなり微妙だ。国内のTwitter人口はまだ1割程度であり、キャズムを超えていない。ブームになり、検索数でmixiに肉薄するようにはなったが、それ程普及してはいない、というのが現在の状況ではないか。先程のGoogle Trendsに、Yahoo! Japanを加えてみるとこんな状況である。mixiですらこの国ではメジャーになりきれていないということか。ただし、これはGoogleの統計なので、それのバイアスはある。mixiはログインを要求するクローズドなサービスなので、そもそもGoogleに引っかからない。Twitterを検索する人はGoogleで検索するよりもTwitter内の検索機能を使うだろう。その意味ではこの統計も利用に関する公平な比較ではない。
急成長しているとはいえ、Facebook利用者数は国内ではまだTwitterの2割である。Twitterやmixiですらキャズムを超えていないというのに。
やっぱりキャズムを超えるのは難しいのではないかな。
実名匿名論については、過去に記事を書いたことがあって、実名でも匿名でもどっちでもいいじゃん、という考えを述べた。たとえ匿名でもブログやmixiなどで継続的に同じニックネームで書いているのであれば、発言者としての特定はされていて、その発言者の自己同一性が確認可能である。実名か匿名かということよりも、自己同一性がネットの上で確定できるかどうかの方が重要だ。
「肩書きのない実名には意味がない」論
この時の話のポイントは、ネットでの匿名での発言は、2チャンネルに代表されるようにとても無責任になりやすく、根拠のない誹謗中傷や風評、煽り、罵倒、更にはいじめを招く原因となっており、 マイナス要素が多いため、ネットでの匿名に対して規制をかけて実名でなければ利用できないようにするべきである、という考え方とそれに対する反論がポイントとなっている。
反論とは、もし実名以外NGとすると、様々な人間関係や仕事の関係上差しさわりがあるようなことについてネットで書くことができなくなり、ネット上での発言の自由度が損なわれるというもの。そして私の立場は余計な規制なんていらない、というものだ。
個人的な体験からいうと、私の場合はmixiの音楽コミュで知り合った友人とライブやセッションでリアルにあった際(いわゆるオフ会状態)、お互いにmixi上でのニックネームで呼びあったりしている。お互い、実名を知らない同士のリアルな人間関係が存在する。実名でない=無責任というのはあまりにも短絡的だ、と思う。
しかしながら、Facebookの場合は少し論点が違っていて、実名であることのメリットがFacebookにはあるかどうか、ということになる。先の斉藤氏の意見では、実名であることによって、現在はコンタクトしていないリアルな知り合いをFacebookで探すことができる点が大きなメリットだとされている。それが、匿名にはないメリットであることは間違いないであろうが、問題はそれが、実名を出すに値する程大きなメリットかどうかということ。そして、日本において実名を出すことについての抵抗感がどれ位強いのか、ということ。
私自身の経験として、過去の友人とコンタクトを取りたくてその人の実名をググったことがある。たまたまその友人は自営業をしていて事務所のホームページに名前があったのでコンタクトは実現した。Facebookが広がれば、そういうことが簡単にできるようになるだろう。だがそのニーズは頻繁にあるものではない。日常的に使うような機能でもないのではないか。
mixiには同級生を探すという機能がある。この機能はちょっと特殊で、通常、mixi内で公開しているプロフィールとは別に、同級生検索に特化したプロフィールを登録する。自分のリアルな出身校や実名を登録して同級生を検索する機能だ。ここに登録された情報は、裏プロフィールみたいなもんで、普段、mixiを使っているときにはみられない。同級生を探す時にのみ参照される裏記録。裏にすることで実名登録を促すような、複雑なしくみになっている訳だ。ところがこの機能で検索をかけてみても、実際にはほとんど実名登録はない。訳の分からないニックネームばかりである。これには、この機能が裏帳簿であることについてのmixi側の説明不測も起因しているだろうと思うが、それにつけても実名を出すことに対する抵抗感を裏付ける事実ではあるだろう。
しかし、mixiにおいても若い世代においては、実名、或いは実名を想起させるような名前の登録が増えているようだ。ネットで実名を出すことに対する抵抗感については、明白なジェネレーション・ギャップが存在する。若者は抵抗感が薄い。じゃあ、Facebookは若者から広がるのかっていうと、それもまた微妙なのは、友人を実名で検索するニーズってのは、ある程度年齢のいった人の方がニーズはあるだろうってことだ。昔の友人を名前で検索できるってのは、若い人にはあまり響かない。
要するに、Facebookが実名制であるということのメリットは、日本ではあまり響かないのではないかと思う。 むしろ、アメリカやカナダ、イギリスといった国で人口の約半数が利用していることの理由の方が私にとっては謎である。なんでだろ?
mixiですら、現時点でネット全体の中ではマイナーなサービスであるとするならば、SNS自体のマーケットが小さいのではないかという私の推論にはそれなりの妥当性があることになる。総務省の調査では国内のSNS利用者は7千万人もいることになってるんだけどね。(平成21年7月総務省「ブログ・SNSの経済効果の推計 6ページより)
データと実感との乖離が非常に大きい。これは私がオールドタイプの世代だからかもしれない。デジタルネイティブ世代の実態については私は全く肌感覚がないのでわからないんだ。
ちなみに、上で引用した斉藤氏は、Facebookのビジネスモデルについて、こんな記事も書いています。
Facebook ビジネスモデルを徹底分析 ~ mixi,モバゲー,GREEと比較
それと国内のSNS会員数に関していろいろ調べてるこんなブログも
各種ソーシャルメディアサービスの会員数について teshiLog by sumio teshi
最近のコメント