2008/03/08 コモディティ ネットの未来記
マーケティングについて語る場合、一般的にはいかにしてコモディティにならないようにするか。汎用品としてのドングリの背比べのような市場競争、価格競争からいかに抜け出してオンリーワンの価値を創り出すか。そのための付加価値をどのように設計するか。ということが問題となります。
しかし、こと、ネットでのサービスについて言うと、いかにして毎日の日常生活に密着し、日用品となるか。生活必需品としてのコモディティとなるか。その点がサービス戦略のポイントになるのではないでしょうか。
これはネットのサービスのビジネスモデルが、多くは広告モデルとなっていることによるもの。テレビも新聞も、コモディティと言えばコモディティ。
ただ、テレビや新聞も、同業者間での競争はもちろんあって、競合会社の数は他の業界に比べると少ないとはいえ、その中での競争はある。テレビの場合は、番組単位での競争もある。つまりコンテンツ単位での競争。
例えば検索サービスがコモディティ化しているとしても、その中でグーグルとヤフーのどちらが選ばれるかという競争はある訳で、その意味では他の業界と変わらない。
via denkiami.bloggers-network283.com
通常、ビジネスにおいてはコモディティ化を嫌い、他社との差異化を狙うのがセオリーだが、ネットにおいてはいかにして日常的に利用されるかがポイントであり、日頃から当たり前のように使われるコモディティを目指す戦略がありえるのではないか、というアイデアを、生煮えながら2008年に上のブログで書きました。
当時はまだ、明確に認識はしていませんでしたが、日常生活に密着しているといえる程、認知が定着していない当時のGoogleの検索サービスのようなスタートアップ、まだまだこれからの成長ポテンシャルをもった企業においては、とにかく他社との競争よりもなによりも、サービスの認知度を向上し、使ってもらうこと、コモディティ化を目指すことこそが最優先の経営課題となるのではないか。漠然と、そんなことを考えておりました。
2008年当時の私の認識の中では、ワールドワイドでは無敵なGoogleも、日本においてはYahoo! Japanに大きな差をつけられており、記憶は曖昧ですが、国内での検索シェアはYahoo! 6割、Google 3割くらいで、ダブルスコアの差があったように思います。今でもそうですが当時においても日本の中ではインターネットのアクセス数ではYahoo!Japanが異常に強かった。ダントツに突出していた。
世界的には圧倒的な検索市場シェアをもっていたGoogleも、なぜか日本ではYahoo!に全く勝てなかった。私の認識では検索サービスの品質ではGoogleの方が優れていたにもかかわらず。広告の世界ではテレビで言うところの視聴率、ネットの場合はページビューの多さが広告としての価値を決めます。それゆえ、利用者にとってはタダでも、とにかく利用の回数をボリュームとして増やすことが広告の課題となる。
それは、Yahoo!JapanにしてもGoogleもmixiも価格.comもCNET Japanも日経ビジネスオンラインにしても同じ。モバゲーやGREEにおいても、ユーザ課金の点で若干ビジネスモデルの違いはあるにしても、ユーザ数の獲得が課題であるという意味では同様の状況にある。
それはつまり、まだ成熟市場となっていない、成長途中の市場においては、他社との差別化以前に市場を広げること、パイを大きくすることが事業としての目的となる。消費者の日常生活においていかに利用を増やすかが課題となる。その意味において、ネット企業にあってはコモディティ化を目指すことが戦略的課題となるのではないか。そう考えたのです。
さて、そんな中で、Yahoo!Japanが検索エンジンにGoogleを採用するというニュースがありました。
Yahoo!JAPAN、Googleの検索エンジンと広告配信システムを採用 正式発表 ( IT media より)
日本のネット市場においては、圧倒的なシェアをもつYahoo!Japanが、Googleと手を組む。ネットの中でも検索という領域においてはGoogleはワールドワイドでは圧倒的なシェアをもちながら、なぜか国内においてはどうしてもYahoo!Japanに勝てないGoogleが、その当の競争相手であるYahoo!Japanと提携する。
日本のナンバーワンと、日本では勝てないが世界のナンバーワンが手を組む。そのインパクトは大きい。先にあげたIT mediaの記事によると、両者をあわせた国内の検索市場シェアは9割に達するという。市場支配率9割は異常だ。もともと国内で圧倒的なシェアをもつYahoo!Japanが、世界最強のGoogleと手を組んだら、日本のネット企業は太刀打ちできない。検索におけるひとり勝ち状態が生まれる。
Googleの検索に表示されなければ、日本でネットの商売はできないということに等しい。では、Googleは公平か?今の段階においては、Googleは比較的フェアにやっているとは思う。おかしなことをやるヘンな会社ではない。企業文化としてはこれまでのどんな企業とも異なるへんな会社ではあるけれど、サービスの品質は高いし、独占をたてに取ったおかしなことはしていない。人気商売ということもあって、かなりフェアな会社だと思う。
しかし、Google八分という言葉が現にあるように、Googleに嫌われたらネットでは商売できない。決定権がGoogleにある。それが9割に及ぶということは、異常といわざるを得ないのではないだろうか。
この市場独占に対して、Microsoftが異議を唱えている。
「Yahoo! JAPANとGoogleの提携は競争を排除」とMicrosoft (IT media より)
この件に関しては、私はこのMicrosoftの意見に賛成だ。最強同士の提携は、そのパワーが圧倒的に過ぎると思う。誰も太刀打ちできない。
インターネットの世界において、検索という機能はとても大切なものである。検索機能がなければ、ネットは使い物にならない。ネットは、誰でも簡単にアクセスできるという点で、革新的な技術である。そのオープンさが、これまでにないコミュニケーションの手段を提供している。それは革命的なチカラであり、今この瞬間にも世界を変え続けている。
そのネットを便利なものとしているのは検索サービスだ。膨大な、大量の情報を蓄積するネットは、検索なくして使い物にならない。蓄積と検索。それはコンピュータの本質である。人間の手作業では到底不可能な規模で、コンピュータはそれを実現する。
検索は、ネットにおいて極めて重要な機能である。私自身も、今、書いているこのブログで、検索のヒット率の悪さに苦労しているところだ。検索でヒットしなければ、アクセス数は集まらない。どんなにいい記事を書いても、検索にのらなければみられることがない。みられなければ、ブログなんて意味がない。その意味ではコンテンツの評価をGoogleが下しているようなものだ。現在ですら既にそのような状況にある。それを、両者の提携が更に強化することになる。Googleに評価されなければ、その価値はゼロになる。Googleが、唯一の審判者になる。
その意味がわかっているのだろうか。のんきなことをいっている場合ではないと思うのだが。
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