ソフトバンクの孫正義氏の「光の道」対談シリーズ第二弾、前回のITジャーナリストの佐々木俊尚氏に続き、経済学者の池田信夫氏だった。なお、佐々木氏との対談については、ジョブズ氏と孫氏の2015年・クラウド革命の違いはどこにあるか(ホームサーバの戦い・第62章) で触れている。今回は、リアルタイムで視聴できなかったので、書き起こし文章をざっと流し読みしただけである。
via mugendai.bloggers-network283.com
ちょっと初めてリブログというやつを使ってみます。そもそもリブログって何?引用とは違うの?という状態なのですがとりあえず試してみる。
さてさて、上でリンクした、mugendai氏のブログですが、約3時間近くの対談のポイントをうまく要約されています。私も同じくリアルタイムでみておらず、対談の書き起こしを読んだ訳ですが。これ無茶苦茶長いです。
もとドコモ取締役で現 慶応大教授の夏野剛氏が司会をつとめた、ソフトバンク社長の孫正義氏と経済学者池田信夫氏のこの対談、2010年6月17日にニコニコ動画 やUstreamで生中継されました。ノーカットで生中継かつ時間無制限(前回の孫正義氏とジャーナリスト佐々木俊尚氏の対談は5時間やったらしい)ということで画期的な対談であります。
孫正義氏の主張は、日本経済再生のためには産業構造をITで活性化することが必要。
iPhoneやiPadなどネット接続端末の普及やアプリのクラウド化によりケータイのデータ通信量が急速に拡大しており通信能力の千倍、万倍規模での拡大が今後必要。
無線帯域には物理的限界があるため、利用者の屋内までは光ファイバーで通信し、屋内に無線LAN装置を設置することで通信量を光に振り向けないと増大する通信需要に対応できない。
そのためには現在約30%の普及率にすぎない光ファイバーを全ての家庭にひくことが必要。
現在、NTTは古いメタル回線の設備と光ファイバーの両方を提供しており特に保守費の点でコスト高になっている。国策としてメタル回線を全て光に置き換えれば、2重コストの解消によるコストダウンで光化の費用は充分まかなえる。税金の投入は不要。
メタル回線を全て廃止すればコストダウンによってNTTの利益は拡大するため、公平競争のためにNTTは回線をひく会社と交換機やネット接続をする会社に分社・資本分離すべき。
日本のIT活用を進めるために電子教科書と電子カルテのしくみをクラウドでつくり必要な端末を無料配布するべき。それによりITを使いこなすリテラシーを育成。また医療費もコストダウンできるはず。
なにしろ3時間近い対談のうちの大半を孫正義氏がしゃべり続けているのですごいボリュームですが大雑把に要約するとこんな感じ。
まあ要するには小泉改革以上の産業構造改革がこれからの日本の発展のためには必要だとぶち上げた訳です。
それが新たな税金の投入をせずにNTTが今の料金体系の中でメタルさえやめれば実現できるといっている。(これに対しては、だったらソフトバンクがNTTを買収して自分でやれよ、と池田氏からツッコミがはいっています)
mugendai氏も指摘のとおり、対談の結果は、天下国家を語り日本のこれからのあるべき姿、方向性についての理想論を語る孫正義氏に対して、大枠としてのITによる産業構造変革の必要性については、池田信夫氏、夏野剛氏、両名とも賛同するものの、それに必要なコストや時間についての孫正義氏の試算については関係者による検証が必要であること。またその試算が概ね正しいと仮定しても、その実現には、政府や関係省庁による大規模な牽引が必要であり、総務大臣のみならず、総理大臣の主導による厚生労働省や文部科学省をはじめとする行政を巻き込んだ改革が必要だ。という、壮大なものとなりました。←誰がやるのかね?
日本の将来のためには、国家レベルでクラウドを含めた情報テクノロジーの活用による産業構造転換を進めなければならないという壮大な話を持ち出さないと議論が収拾しないという、総論賛成、各論反対といったところ。単純化していっちゃうと、理想はわかるけど現実には無理だろ?というのが両名の孫正義氏に対する見解だったように私は受け止めました。
ま、池田信夫氏はテレビやケータイを巡る電波の割り当てを合理的なやり方に見直す必要がある。来年のテレビのアナログ地上波停波が、大胆に見直すラストチャンスだ、というそれだけをいいたかったようにも見えましたが。
さてここからが私の感想。
孫正義氏はメタルを廃止して全て光化しろといっている。彼らしくないことには自分がやる、とはいわない。
利害関係者としてのソフトバンクにどのような影響があるのかといえば、ケータイのデータ通信量の急激な増加への対応が可能になる。すべての回線が光化することでネット関係のビジネスチャンスが拡大する。ISPだけではないでしょう。出資したUstreamやストレージ、クラウド、電子書籍や映像コンテンツなどブロードバンドによる新たなサービスが可能になる。付加価値の低い回線管理をNTTに任せてそれを安い料金で借りられる。電子教科書や電子カルテの端末としてiPadが売れる。(孫正義氏は端末をタダで配るといっているけど、自社からタダで提供するとはいっていない)
まあビジネスなんで利害があるのは当然として、それが天下国家のためになるならば、全体最適化にそうならばやればいいと思います。ただしコストの問題はある。
孫正義氏の試算にはちょっとみただけで疑問もある。本人はきちんとデータに基づいて試算しているといっているけれど。例えば、電話しか使わない人の回線も光化する。電話の料金は従来と変えない。光を電話に変換するアダプタを貸し出す。といっているが、ぱっとみ、アダプタの料金は試算にはいっているのだろうか。光化の工事も2万6千人の工事担当者がいれば5年で4,600万回線分の工事ができる、と計算しているが、今時、日中家にいない人は多い訳で、工事の人数だけいりゃいいってもんじゃないんじゃない?試算に間違いがあったら指摘してくれと孫氏はいってるのでその辺は誰かえらい人がやってくれるんだろうけど。
一番大変なのは、現状の全てのメタル回線を光に変える、という部分なんだろうな。メタルと光のコストの二重化を解消することで税金使わずに光化できるといってるので、全部を光にしないと計算が全壊する。今あるものを全部変えるとなると、こりゃあ法律でやらないと無理ですね。国家事業としてやるのか。電子政府だってずいぶんなおカネをかけて、一部しかできてないのにな。かなり大変だと思う。もしそれが必要なことならば、実現が難しいからといって諦めちゃあだめなんだ。どうすれば実現できるか本気で議論しなきゃいけない。そう、孫氏はおっしゃるけれど。
そして、夏野剛氏はインフラだけつくっても意味がないと指摘する。光による高速な通信を使って快適な生活と更に産業構造の転換を実現しなければ、無駄な設備になってしまう。これはこの対談の前に孫正義氏と対談した佐々木俊尚氏もほぼ同意見だと思う。夏野氏は電子カルテや電子教科書は5年では実現できないという。コストだけの問題ではない。行政や業界を巻き込んだ大きな改革を行わない限り実現しない。と。まあこれが現実的な意見なような気がします。医療関係は大変。
それが簡単ではないことも政治や行政を巻き込んだ大きな改革が必要であることも孫正義氏は認めています。でもやらにゃいかん。と、そんな感じ。
三者が同意したのは、ITをもっと政府が真剣に考えにゃいかんということと、「光の道」という構想が主として政治の課題であること。国の方向性としてのジャパンビジョンを立ち上げる必要がある。また、そのような国の方向性を定める議論が密室内で行われることはおかしなことであり、今回のこの対談のようにオープンな場で議論し、その決定には国民も参加する形で行うべきである。ニコニコ動画やUstreamやツイッターなどの手段でそれは可能である。
まあどうも、坂本龍馬の見すぎでなけりゃいいんだけど。政治は変わりますかね?本気で信じているのかしらね?
あ、白いお父さんの出馬で日本の政治は変わるのか!
コメント
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