人々は自らの行為に恐怖した

今、世界は金融経済システムの崩壊の危機に脅えている。
この危険を過小評価してはならない。全てが一切合財ひっくり返るかもしれない。それはリアルで、全ての人に関係があり、誰ひとりとして無関係ではいられない「今、そこにある危機」なのだ。人々はその危機の大きさを測りかね、その恐怖に脅えている。そして、その恐怖そのものがこの危機を増幅している。

単純に言うと、人間の経済活動において、信用が失われている訳なのだ。経済はこれ程までに「信用というもの」に依存していたのだと誰が知っていたのだろう。その不確かであやふやなもの。不確実性。

物理学的には、そもそも世界は不確定性の原理に基づいているとされている様だが。

今日の経済は、市場経済の上に立っており、神の見えざる手によって導かれていることになっている。経済は市場価値の変動（上昇、下降の動き）によって勝手に調整されるはずのものであったのだ。

今、市場が機能していない。市場の失敗。市場原理への過信がこの危機の根底に横たわっている。投機マネーという名の過信。

信用というものがこれ程までに大きな力を持っているとは。全てが信用の上に成り立っていたとは。その影響がこれ程までに大きなものだったとは。

その信用が、今、失われている。

失われた信用を取り戻すことは容易ではない。それは個人の経験からしても明らかなことだ。

この現実に直面して思うのは、経済学というものの無力さ。

人間は、これ程までに自分たちの行動を理解できていないのか？こんなにも訳も分からず盲目的に行動してきたのか？自分たちが何をしているのか、全く理解せずに動いていたのか？

確かに、この危機は、様々な要因が複雑に絡み合っている。その全貌を理解している者は誰ひとりいない。経済全体の動きを理解している者は皆無だ。神の見えざる手とは正しくそのことを言い当てている。それは言い換えると誰もが他人任せということだ。誰も責任を取らない。誰のせいでもない。それが現実。

この複雑な経済を計画経済によってコントロールできるとも全く思わないが。しかし誰もコントロールしない市場という怪物の恐ろしさ。

実感として、市場は論理的合理的基盤を離れ、感情によって左右されていた。噂が経済を左右してきた。ウォール街の噂が。梃子の原理がその影響を拡大していた。馬鹿げた井戸端会議の経済。それは果たして合理性に基づいていたのだろうか。

市場の正体。

人々は、自らの立っていたその地盤の危うさに今、直面している。

果たして、コミュニケーション＝情報の共有によって、失われた信用は回復できるのであろうか？


世界は今、疑心暗鬼に囚われている。

そんな世界の中でもしかし、私はオプティミズムでありたいと思っているのだが。



All you need is love.