3月11日の地震の被害。そして今もなお進行中の福島原発事故。
これらの影響による日本の経済危機は我々が思っている以上に深刻なのではないかと私は考えている。まああんまりマスコミが経済危機を煽っちゃうとそれはそれでロクなことにならないのでこの方がいいのかもしれないが。
もともとこの震災発生以前から日本の財政赤字すなわち累積借金は膨れ上がっていて、対策実行待ったなしの状態だったのに。借金そのものはインフレになれば解決は容易になるという見通しもあったが、震災復興に中長期で対応が迫られる現状、インフレにもっていくことは難しいだろう。そもそも景気が3月以前より沈むことはあってもアップする見通しは何もない。
加えて年金や健康保険という社会保障制度の制度破綻危機。この大きな問題についても当分の間は手をつけることができないだろう。若年世代への負担増だけが手付かずのまま更に進行していく。問題の先送りがこのまま継続する。今のままでは絶対うまくいかないとみんなわかっているのに。それに対して大胆な処置をする機会は失われてしまったと感じる。本当に破綻までいくんじゃないのか。
景気の行方にもいい材料はほとんどない。復興に向けてカネが動くとされているが。注ぎ込んだカネが景気回復に好循環を回すのか。私はその点についても悲観的だ。建設業は潤うだろう。短期的には雇用を生み出すかもしれない。しかし、道路や建物のインフラ建設のための費用は景気の向上には短期的には効かないのではないか。
そこに注ぎ込まれるのは税金だ。税金の形で無理やりカネを回すことが景気刺激になることはケースによってはあるはずだが、今回は、注ぎ込んだカネが次の生産につながらない。短期的には。波及効果が限定的であるように思われる。
なんか、経済のこの先の行方についてはとても I have a bad feeling about this. なのだ。悲観的にならざるを得ない。
東北地方における被害の国内製造業にあたえる影響は思いのほか大きかった。部品の不足は想像以上に製造業のボトルネックとなった。サービス業は?東北以外の地方においても自粛ムードというかたちで消費が伸びない。これの影響は長くは続かないだろうとは思うが、戻ったとしても以前と同じレベルまで。景気をアップさせるような力強い要因はどこにもない。
これに加えて東電管内の電力不足だ。それにもしかすると中部電力管内でも同様のことになるかもしれない。大きな電力を使う製造業における生産量抑制にはたらくことと、それに加えて生産効率は悪化する。つまり多くの企業においてコストアップをもたらす。国際競争にさらされる製造業にとって更に厳しい条件が背負わされることになる。今、生産が止まっている製品・部品メーカのポジションが他国メーカに奪われる危機にあるというのに。
そしてまた、原発を止めていることにより火力発電の稼働率は上昇し、石油の価格上昇もほとんど確定。なにしろこれが世界中のトレンドになっていくのだから。これもまた企業にとってのコストアップ要因だ。石油が上がれば電力料金も上がる。
さすがにこの状況で円高は続かないだろうと思う。為替が円安に大きく振れれば輸出企業にとっては追い風となる。だが果たして価格だけで勝負できるほどの割安感までもっていけるかどうかは疑問。企業業績を大幅に伸ばすほどの強力なパワーにはならないだろう。
なんだか、先を考えるとやばいことばかりでいい材料がないじゃないか。これで危機感ないんだったら、それは鈍感力が強すぎるんじゃないか?
だからこそ、日本中でこの危機感を共有する必要があるだろうと私は思う。これは東北だけの問題ではない。東日本だけの問題でもない。全然全然、他人事じゃないのだ。我々の問題だこれは。今、ここにある危機だ。CRISISだ。それも大文字だ。
そして、これまでのニッポンを再定義する必要がある。これまでやってきたやり方は捨てる覚悟が。捨てて、これから全部新しいやり方を考えていく。全部、新しいやり方を創り出していく。それくらいの覚悟が必要だと私は思っている。
新しいニッポンをリデザインしていかなければならない。そのためには年寄りは不要だ。今こそ。まさに今こそ若い人たちに考えさせ、意志決定をゆだねていく転換点なのだ。これからのニッポンはどうあるべきか、若者をその議論に巻き込んでいかなければならないはずだ。
本当にほんとうにゼロベースで思考していかなければ、この危機を乗り切ることはできない。
誰かが言っていた。これは第2の敗戦なのだと。
マイナス地点からの再出発なのだ。
覚悟せよ。
この際、本気で覚悟を決めて、古いやり方を全部見直しすることができたら、日本は随分身軽になれるはず。
「全部」というのがポイントだ。厳密な意味で全てを見直すことは到底不可能だが、だがしかし、個々の問題をそれぞれ個別に改善するのではなく、あくまでトータルに見直すことでその効果、その影響は個々での見直しよりもはるかに大きくなる。
震災の被害が極めて大きいために、旧来のやり方を大胆に改めるためのきっかけとするべきであろうと考える。理念としては全面的に改めるべきだ。この危機はそれくらい大きい。
どう見直すか。
余計なコストや余計な手順を全部止める。既得権益はなしにして効率を優先してリデザインする。
東電やマスコミの高給もなし。稼ぎに応じたペイにする。
ずっと続いてきた無駄をこの際、カットできれば効率はあげられる。回転を速くできる。スピードをあげられるはずだと思う。
あくまでも覚悟を決めて、リデザインを断行すれば。の話しだ。
やるべきだ。と私は思う。
私は無責任に放言してるだけだけど、リデザインするべきは「ニッポン」だ。財際赤字と社会保障だけじゃない。民間企業のあり方も含めてリデザインだ。
「ニッポン」全体で取り組むべきだが、個々の企業でできることもあるはずだ。これから将来に向けての大胆なリデザイン断行の上では、年寄りがそれを決めるのではなく若者世代への大胆な権限委譲もあわせて進めるべきだと考える。
例えば、企業の製品開発における権限を大幅に若手に権限委譲する。あわせて、その開発プロセスをオープンにすることを決める。デジタルネイティブ達はネットを通じた横のつながりがオールド世代よりもはるかに強いだろう。
開発プロセスをそのネットワークに流し込むのだ。オープンなかたちで。ネタに魅力があればフィードバックは速く、大きいだろう。従来よりもずっと消費者ニーズに、マーケットにマッチした開発が期待できる。
日本再生のためにはネットをうまく使うことが効果的なんじゃないだろうか。うまく使えばすごいことができる気がする。スピードと広がり。それをうまく使えればそのポテンシャルは大きい。
そういうことを始められれば。
それが残された希望であるように思う。
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2011/05/08 19:24
本文中で述べているが、今後、国際的に原油価格が上昇するのはほとんど確定だ。
それに円安が重なるとどうなるか。物価高。インフレ。それはすみやかに効く。電気料金は上がる。今の法律ではそうなっているはずだ。
景気の回復がそのインフレに追いつかなかった場合どうなるか。
景気の停滞と物価上昇が同時に進行するスタグフレーションというやつだ。
生活環境は悪化する。不満はたまる。
今までが幸せすぎたのだろうか。
不満がたまって、その先はどうなる?
政権は交代するかもしれないが、それで景気はよくなるだろうか?
さらに公共事業に税金が投入されるのか?道路とか?リニアモーターとか?
借金は増える訳だ。
ニッポンのリデザインは、やはり断行されるべき必然ではないだろうか。
いずれにしてもこの危機は極めて大きい。
ニッポンは壊れるかもしれない。
投稿情報: 鍛冶 哲也 | 2011/05/21 19:06