2月22日、電通が日本の広告費の調査結果を発表しました。
ネット広告費が新聞を抜く--電通「2009年日本の広告費」を発表
電通によると2009年の新聞広告は対前年比18.6%減の6739億円。
また週刊東洋経済によると、新聞発行部数も減少を続けており、減収を補うためにニュースのネット配信の有料化への取り組みが日経新聞やニューヨークタイムズなど日米で動き始めているそうです。
しかし既にネットでタダでニュースを見ることに慣れているユーザが、お金を払ってこれらのサイトを利用するのか。事業の採算性には険しい道のりが待っています。日経新聞では有料のネット利用者に対しては、閲覧履歴に基づく記事のリコメンドやキーワードによる記事の自動クリッピング、記事の保存、自分の閲覧履歴表示などの機能を提供するとしています。日経新聞購読者はこれらネット機能を月額1,000円で利用できます。ネットだけの利用者は月4,000円。しかしこれらの機能が果たして有料会員を集められるのか。
アメリカのウォールストリートジャーナルなど一部を除き、ネットの有料化(ユーザ課金)に成功している新聞や雑誌はほとんどありません。他社がネット上で無料で記事を公開している中で1社だけが有料化してもうまくやるのは難しいでしょう。
ニュースや記事のコンテンツが、お金を払ってでも見たくなるほど他社との差別化をすることができるのか。それが課題です。ネットならではのパーソナライズされた機能の提供にもメリットはあるとしても、サービスの核はやはりなんといっても記事そのものにあると考えます。
私見ながら、ニュースの差別化は難しいでしょう。付加価値をつけ、差別化を図るならば、単なる事実の報道だけではなく、その背景や今後に与えると予想される影響、関連する業界動向など、様々な角度からの分析を加えた解説記事による差別化でしょうね。
実際、今でも既に新聞記事というものはひとつのネタだけではなくそれに関連したニュースをいくつかまとめて記事にするケースが増えていると感じます。
それは新聞の雑誌化の動きといえると思います。先にあげた週刊東洋経済や週刊ダイヤモンドなどの雑誌は、特定のテーマを特集として取り上げ、関連情報もたくさんまとめて深く掘り下げた記事を提供しています。様々な角度からの情報源をひとつにまとめることによりそのテーマをより広く、より深く理解することができる。それはテレビにおけるニュースと特集番組の違いのようなもの。ひとつのテーマにたっぷりと時間や紙面をかけることで、テーマに関連するより多くの多角的な情報を提供することができる。
週刊東洋経済の特集の中で、 慶応大メディア研究科の坪田知己教授は、オンライン新聞のあるべき姿として「現在と過去の結合」をあげている。今のニュースを解説するにあたって過去の記事との関連を解説することにより、より深くつっこんだ情報が提供できるという。なるほどなるほど。ひとつのニュースに関して、関連業界への影響など面的な広がりとともに、過去からの歴史経緯、さらには今後への影響予測としての時間軸を加えて解説するならそれは確かに高い付加価値を持つだろう。そのためには深い見識を持った記者が必要だが。情報は加工され編集されることによりその価値を高める。
断片的なニュースは差別化も難しくその価値もあまり高くない。うまく説明できないが、それはTwitterの情報と似ている。速いが、浅いし、断片的。しかし関連する情報をとりまとめ、その全体像を相関関係として構造化して解説した記事には付加価値がある。
それはつまりニュースではなく、解説記事を売り物にするということ。 だが考えてみれば今だって既に新聞には特集記事や解説記事、コラムやインタビューなど、ニュース以外の記事もたくさん載っている。もしかしたらそれらの重点が少し動くだけのことかもしれない。
新聞がそうした方向を目指すとするならば、それは日刊の雑誌になるということでしょう。深く掘り下げた記事を毎日だす。
でもそれは日経BPネットやこのCNET JAPANが既に無料で提供していることでは?そう思って久しぶりに日経BPのサイトをのぞいてみたら、なんだかサイトデザインが変わっていた。なんかすっきりとシンプルになった気がする。これは日経新聞の有料サイト開設にあわせて無料のサイトのコンテンツを減らしにきているのだろうか?
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。